AIで仕事は速くなったのに、プレイングEMが楽にならない理由

オピニオン

AIを使えば、プレイングEMの仕事も少しは楽になる。

僕も最初は、そう思っていました。

実際、仕様書のたたき台を作る。会議のメモを整理する。タスクを分解する。こうした手を動かす仕事は、以前よりかなり速くなりました。

でも、速くなったのは僕の作業であって、チームに必要な判断まで減ったわけではなかったんですよね。

むしろ、整理された資料やタスクが増えるほど、「どれを優先するのか」「誰に任せるのか」「なぜ今やるのか」を決める仕事が前に出てきます。

僕の場合は、自分のアウトプットは増えているのに、メンバーが僕の判断を待っている状態を作ってしまったことがありました。

この記事では、その経験から感じた、AI時代のプレイングEMが仕事を抱え込みすぎないための考え方を整理します。

AIが減らすのは作業時間であって、意思決定ではない

AIは、すでにある材料を見える形にする仕事が得意です。

散らかった会議メモから論点を抜き出す。決まった要件を仕様書の形にする。実装に必要そうなタスクを洗い出す。こうした下準備では、僕もかなり助けられています。

以前に書いたNotebookLMを使ったMTG準備の記事でも触れましたが、AIは考える前の土台を作る道具として使うと、かなりしっくりきます。

一方で、材料が見えるようになっても、決めることまでなくなるわけではありません。

  • 今は何を優先して、何を後回しにするのか
  • 誰に任せて、どこまで判断してもらうのか
  • 関係者へ、どの背景まで共有するのか

このあたりは、事業の状況やチームの経験、関係者との約束を見ながら決める必要があります。

AIに優先順位を提案してもらうことはできます。ただ、その提案を採用するかどうかは、結局誰かが引き受けなければいけません。

AIが減らしてくれるのは作業時間です。EMが向き合う意思決定の数まで、自動で減らしてくれるわけではありません。

忙しいほど、判断よりプレイヤー業務へ逃げやすい

僕はコードを書くことが好きです。

不具合を直す。レビューを返す。仕様書の形を整える。手を動かした分だけ成果が見えるので、前へ進んでいる感覚があります。

忙しいときほど、この分かりやすさに逃げやすいんですよね。

僕も、コードやドキュメントに集中していれば、チームへ十分に貢献できていると思っていました。

でも、その間に後回しにしていたのは、タスクの優先順位や、担当するメンバーへの期待値、関係者との認識合わせでした。

結果として、僕の手元ではアウトプットが増えているのに、チームには「次に何を優先すればいいか」が渡っていない状態になりました。

メンバーが止まっていたのは、能力が足りなかったからではありません。判断に必要な背景を、僕が渡せていなかったからです。

問題は、プレイヤー業務をすること自体ではありません。マネジメントで決めるべきことを避けるために、プレイヤー業務を使ってしまうことです。

きれいなドキュメントだけでは、チームは動けない

AIで作ったドキュメントは、驚くほどきれいです。

見出しが揃い、文章も読みやすく、抜け漏れの候補まで出してくれます。だから、そのまま共有しても仕事が進みそうに見えます。

ただ、整った文章だけではチームが動けない場面がありました。

なぜ今これをやるのか。なぜ別の案ではないのか。どこまで自分で決めてよいのか。こうした問いへの答えがなければ、ドキュメントは指示の一覧になってしまいます。

僕が不足させていたのは、情報ではなく意志でした。

背景や迷い、優先順位の理由は、きれいに要約する前に自分で引き受けておく必要があります。

タスク整理でも同じです。AIが細かく分けた手順をそのまま渡すと、親切に見える一方で、メンバーが考える余地まで先回りして閉じてしまうことがあります。

ドキュメントやタスクの目的は、読む人が手順どおりに動くだけの状態を作ることではありません。背景を理解したうえで、次の行動を自分で選べるようにすることだと思います。

まずは、今抱えているタスクを一つだけ仕分ける

では、何から変えればいいのか。

いきなりすべての仕事を整理し直す必要はありません。まずは、今抱えているタスクを一つだけ選んでみてください。

そのタスクについて、次の3つを考えます。

  • AIに下準備を任せられる部分はどこか
  • メンバーに渡せる判断はどこか
  • EMが背景として伝えるべきことは何か

たとえば定例ミーティングの準備なら、AIには議題と関連情報の整理を任せる。メンバーには各論点の解決案を考えてもらう。EMは、なぜ今その論点を優先するのかを共有する、といった分け方ができます。

ここで大事なのは、AIへ任せる作業を増やすことだけではありません。

メンバーへどの判断を渡すのか、自分はどの背景を握るのかまで考えて、初めて仕事の境界が見えてきます。

毎回きれいに分けられるわけではないですし、チームやプロジェクトの状況によって境界も変わります。それでも、一件ずつ見直すだけなら始めやすいかなと思います。

AIに任せる技術より、自分が握る仕事を選ぶ

AIを使うと、できることは増えていきます。

だからこそ、プレイングEMの仕事は「自分がどれだけ手を動かしたか」だけでは測りにくくなります。

AIにたたき台を作ってもらう。メンバーには目的と判断の範囲を共有して任せる。EM自身は、背景や優先順位、対話を握る。

この境界を考え続けることが、AI時代のプレイングEMには必要なのだと思います。

まずは今日のタスクを一つだけ見て、「AIに任せる部分」「メンバーへ渡す判断」「自分が伝える背景」を一行ずつ書き出してみてください。

僕自身もまだ試行錯誤の途中ですが、この問いを持つだけでも、自分がチームのボトルネックになっている場所へ気づきやすくなりました。

実務で使える判断軸とシートをnoteにまとめました

AI、メンバー、EMの役割をどう切り分けるか。ドキュメントやタスクをどこまで手放すか。

この判断を実務へ落とし込む方法は、有料note「AIで仕事は速くなるのに、なぜEMの仕事は楽にならないのか」にまとめました。

noteでは、プレイングEMの仕事を「作る・整理する・決める・見守る」の4つに分け、AI、メンバー、EMの誰に何を渡すかを整理しています。

購入特典として、実際の仕事を仕分ける「アサイン前・仕分けシート」と、チームの詰まりを見つける「ボトルネック検知・振り返りシート」も用意しました。

今抱えている仕事を一つ整理し、どこから手放せるか考えたい方には、役に立つと思います。